1980年代後半から2000年代前半にかけて若い頃を過ごした就職氷河期世代はそのほぼ全てが「テレビっ子」であり、そしてフジテレビの番組に熱中していた者たちでした。そして、そのフジテレビが就職人気企業として上位にランクする時代が長く続く中、かつてのテレビっ子とたちは内定を貰えるわけでもなく羨望の眼差しを送り続けていたーーそれがフジテレビだったのです。
私たちはフジテレビを見て育った
視聴者側としても90年代のナンバーワンテレビ局といえば、名実ともにフジテレビでした。
多くのOLたちが月曜の夜は街から消えたとまで言われたドラマ「東京ラブストーリー」(1991年)や、今でも「ワイドナショー」のコメンテーターとしてもご健在の武田鉄矢さんが主演をつとめた「101回目のプロポーズ」(1991年)は90年代の初めにそれぞれ平均視聴率30%以上を記録。
バラエティでは「ダウンタウンのごっつええ感じ」「とんねるずのみなさんのおかけです」で笑い、音楽では「HEYHEYHEY」を見てCDを購入するという流れも構築。そのどれもが高視聴率を得ていたとんでもない時代でした。
実際には1983年〜93年にかけて視聴率3冠王をとり、バブル経済と共に歩みを進めていたフジテレビですが、途中、日テレに負けはするものの、2004年〜2010年には3冠王復活を遂げるなどマスメディアの王者として君臨する存在でした。
私たち氷河期世代からすると「ひらけ!ポンキッキ」を朝に見て育ちましたよね。当時の朝はニュースワイドが編成されていなかったのです。(なぜに横並びで現在はニュース情報ワイド番組ばかりやっているのでしょうか?)
2000年代に入ってからは、映画事業で成功を収めるなどのメディアミックスが成功したこと(「踊る大捜査線」「海猿」とか映画館に見に来ませんでしたか?)による3冠王返り咲きだったわけですが、80年代〜90年代は子供時代・10代の頃にフジテレビで育った私たちからすると「人気の就職先」としてフジテレビがランクインするのは当然の出来事でした。
人気の就職先として常に上位にランクインした「フジテレビ」
パソコンが一般的になるか前、スマホなんて夢の夢で誰も想像にすらしていなかった90年代から00年代初頭にかけて、テレビが情報源や話題として圧倒的に強い影響力を持っており、特にフジテレビは先に記したように「トレンディドラマ」や数々の人気バラエティ番組を制作していたため、視聴率もトップを誇る局として知られていました。この成功や、女性アナウンサー(フジテレビでは「女子アナ」と言う言葉を発明?)テレビ業界への就職希望者にとってフジテレビを魅力的な就職先にしていました。
特に、フジテレビは、若者文化や流行をリードする「若さ」や「華やかさ」をイメージを持っていました。これにより、特にエンターテインメントやメディアに興味のある学生たちからは、働くことに対する憧れやステータスとしての価値が見出されていたのです。
今、話題の老害の象徴のようになってしまっている日枝相談役取締役さんだって1980年(42歳)の時に制作の要である編成局長 になっているし、1988年(50歳)で社長に就任をしている。この若さでの昇進はフジテレビの当時の若さと勢いと良いも悪くも「ノリの良さ」があったということだと思いわれます。(その「ノリ」が今回の問題の発端になっているのですが)
そもそも、50歳で社長就任が若いと思ってしまうのが氷河期世代の闇深いところでもあります。今どきの方が、若くして社長になるIT企業などは多いですからね。
また、 当時の大手テレビ局は、一般的な企業と比較してもとんでもなく良い給料だということは世間一般的にも知られていました。20代そこそこで1000万円オーバーが(私大文型卒で)狙える企業は今でもそうそうありません。
煌びやかな世界に入って、大手芸能プロダクションやスポーツ界とパイプを持ち、はたまた報道記者として政治経済の世界に取材をかける・・・そんな夢の世界が広がっているのでは!?と学生たちが飛びついたのはいうまでもなかったのです。
それだけにフジテレビの就職試験は非常に競争率が高かったと思われます。人気があるということは、当然多くの応募者が集まることを意味し、合格するのは非常に難しかったと言われています。私が中学生だった頃、就職活動中だった教育実習にきた大学生が「フジテレビの入社試験を記念に受けてきた」と言われたことがあります。それだけ、フジテレビは日本を代表する顔のような会社であり、遊びまくっていたバブル〜90年代の学生たちにとっては「とりあえず受けておく」ザッツ人気企業だったのです。
ですが、いわゆる縁故入社・コネ入社が多いことは誰しもが知ることですし、アナウンサーともなればルックスも必要になってくると言うもの。ごくフツーの大学生が内定を勝ち取るには相当な実力と運が必要だったことはいうまでもありません。そして、現在飛び交っている噂では、フジテレビの女性社員さんは非常にお綺麗な方が多いとも当時から噂されていましたからそうした更に厳しく高い壁のようなフィルターがかかっていたことも嘘ではないでしょう。
令和の就職人気ランキングからテレビ局が消えた
就職氷河期世代からすると信じられないことですが、2020年代に入ってからNHK・民放を含むテレビ局が就職人気ランキングの50位から消えたそうです。しかもその人気も1番上に来るのが「テレビ東京」でだったりするとのこと。
私たち就職氷河期世代からするとテレビ東京は、フジ・日テレ・TBS・テレ朝がいて、その下にいるネタにされるような存在だったと記憶しています。(テレビ東京も昔から大好きです)
それは、しかし、2000年代からのインターネットの普及や視聴スタイルの変化などによるところも大きいでしょうが、公務員や銀行・金融、製造、流通などの手堅い業界とは違いテレビ局には「面白いことができそう」という夢と希望があったのがなくなってしまったからなのではないしょうか。
手元にあるパソコンにはテレビよりはるかに身近にスターたちや推したちとライブ感覚で日々から繋がり、YouTubeへもかつては地上波テレビで制作をしていたテレビマンたち(局員ではないのがポイント)が実力を発揮し、仲介手数料を経ずにビッグマネーを獲得しているのが可視化されてしまっているのです。
テレビ局に入社したものの、数年でノウハウなどを学びフリーランスや会社を立ち上げるなどしてテレビ局を背負わずして発信を行う元テレビ局員の若手も激増しているとか。
就職氷河期にとって憧れであり、勝者の証でもあった「テレビ局に内定」と言うフレーズはもはやなんてことでもなくなってきている。2010年代から囁かれていたテレビ離れがいよいよ就職戦線でも行われ人材不足がかつての人気企業であるテレビ局でも起きているのは氷河期世代からするとちょっと寂しいところもあります。
でも、そんな私は今でもテレビが!!!・・・好きというほど・・・見ていないですね。そんなテレビ業界と就職氷河期世代の話は相性がいい気がするのでこのテーマでは今後もいろいろ書いていきたいと思います。